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東京地方裁判所 昭和41年(手ワ)896号 判決 1966年10月27日

(1)、(2)事件原告 東洋商事株式会社

右訴訟代理人弁護士 山本草平

(1)、(2)事件被告 ハイウエーブ工業株式会社

右訴訟代理人弁護士 日上弘三

主文

一、被告は原告に対し、金一〇〇万円及びこれに対する昭和四〇年一一月七日以降完済までの年六分の割合による金員を支払え。

二、原告のその余の請求を棄却する

三、訴訟費用は、(1)昭和四一年(手ワ)第六九号事件及び(2)同年(手ワ)第八九六号事件を通じてこれを三分し、その一を原告の、その二を被告の負担とする。

四、この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は、主文の第一項と同旨及び「被告は原告に対し、金五〇万円及びこれに対する昭和四〇年一二月二三日以降完済までの年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、請求の原因として、

一、被告は、左記(一)の約束手形(以下単に本件(一)の手形という。)を支払拒絶証書の作成義務を免除した上原告に対して裏書譲渡し、左記(二)の約束手形(以下単に本件(二)の手形という。)を原告に対して振出した。

(一)  金額 五〇万円

満期 昭和四〇年一二月二二日

支払地 東京都千代田区

支払場所 株式会社住友銀行麹町支店

振出地 東京都港区

振出日 昭和四〇年一〇月一八日

振出人 富士興産株式会社

受取人 ハイウエーブ工業株式会社(被告)

(二)  金額 一〇〇万円

満期 昭和四〇年一一月六日

支払地 東京都港区

支払場所 株式会社三和銀行新橋支店

振出地 東京都渋谷区

振出日 昭和四〇年一〇月二〇日

振出人 ハイウエーブ工業株式会社(被告)

受取人 東洋商事株式会社(原告)

二、原告は、本件(一)及び(二)の手形をそれぞれの満期に支払のため支払場所に呈示し、現にこれらの所持人である<省略>。

被告訴訟代理人は、請求棄却の判決及び(1)事件について仮執行免脱の宣言を求め、答弁として、「被告が本件(一)の手形に裏書をし、本件(二)の手形を振出したことはいずれも否認する。ただ、本件(二)の手形の被告会社代表者作成名義部分の印影が被告会社の代表者印によって顕出されたことは認める。その余の請求原因事実は全部認める。」と答えた。

証拠関係<省略>

理由

(本件(一)の手形金の請求について)

被告は、東京都渋谷区代々木一丁目二二番地を本店の所在地とし、昭和四〇年一一月二五日開催の株主総会において解散決議をなし昭和四一年二月一六日その旨の登記をするまで東京都港区麻布笄町七五番地を住所とする訴外吉田源次郎を代表取締役としていた株式会社であることが成立に争いのない乙第一号証の記載によって認められるのであるが、他方成立に争いのない乙第二号証によれば、東京都新宿区荒木町九番地を本店所在地とし、東京都港区赤坂青山南町一丁目五五番地を住所とする訴外吉田源次郎を代表取締役としていた「ハイウエーブ株式会社」なる商号の株式会社も存在することが認められるところ、原告会社代表者夏目喜次郎尋問の結果及び本件(一)の手形である甲第二号証の記載によれば、原告が本件(一)の手形を取得した際には、その受取人が「ハイウエーブ株式会社吉田源次郎」、第一裏書人が「東京都新宿区荒木町九番地ハイウエーブ株式会社吉田源次郎」とそれぞれ記載されていたのを、その後原告会社において右の「ハイウエーブ」なる文字と「株式会社」なる文字との間に「工業」なる文字を挿入し、又第一裏書人欄の「吉田源次郎」なる文字の前に「代表取締役」と記入したものであることが認められる。してみれば、本件(一)の手形は、被告と類似の商号ではあるが別個の「ハイウエーブ株式会社」もしくは吉田源次郎個人によって原告に裏書譲渡されたものというべきであるから、爾余の判断をするまでもなく、被告に対して本件手形上の責任を問い得ないことは明らかであるといわなければならない。

(本件(二)の手形金の請求について)

本件(二)の手形の振出人の記載の名下の印影が被告会社の代表者印によって顕出されたものであることを被告が認めているので、結局、本件(二)の手形は、被告会社の代表取締役吉田源次郎によって正当に作成、交付されたものと推定されるところ、この推定を動かすのに足りる証拠はなく、原告が本件(二)の手形をその満期に支払のため支払場所に呈示し、現にその所持人であることは当事者間に争いがないから、被告は原告に対し、本件(二)の手形金一〇〇万円及びこれに対するこの満期の翌日である昭和四〇年一一月七日以降完済までの年六分の割合による法定利息の支払義務を負うものというべきである。<以下省略>。

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